2011年06月28日
気分は山頭火/熊本・日奈久温泉の旅1
「熊本に、良いひなびた温泉があります。行ってみませんか?」。JR九州、そして肥薩おれんじ鉄道からのお誘いだった。温泉は八代市の「日奈久(ひなぐ)温泉」。放浪の俳人・種田山頭火が愛した湯だという。ちょっと心が揺れた。鹿児島まで飛行機で、そこから鹿児島、熊本の海沿いを北上し、日奈久へと向かった。紫陽花(あじさい)の花が曇り空に、やさしく咲いていた。
(写真=街のありらこちらには山頭火の俳句が書かれた句板が)
東シナ海、そして八代湾へ、車窓から見る海の色が少し変わってきたようだ。深い青から淡い青に…。
その青の向こうには天草諸島がぼんやりと見えた。その天草に夕日がストンと落ちるという。
残念ながら、まだ日は高い。晩白柚(ばんぺいゆ)の白い花が、あちらこちらに見える。ザボンよりも大きな実を成らすわりには、かわいい白い花である。
そんな景色を楽しんでいるうちに「日奈久温泉」駅に着いた。驚いたことに、山頭火さんのお出迎えである。網代笠(あじろがさ)をかぶり、墨染めの僧衣、右手には杖(つえ)。黒ぶちの丸めがね。
(写真=日奈久の街を案内して歩くボランティアガイドの池田さん。山頭火の衣装は、すっかり有名に)
そっくりさんは地元でボランティアガイドを務める池田正一さん。酒屋のご主人である。わざわざの出迎えに恐縮しながら、日奈久温泉街、そして山頭火が1930年(昭5)9月に滞在したという「織屋(おりや)」という宿に案内してもらった。
「山頭火が泊まった宿で、そのままの形で現存しているのは恐らく、ここだけではないでしょうか?
山頭火ファンが毎年9月を中心によくお見えになります。シンポジウムの会などもここで開かれます」。
現存はするが、現在は空き家になっている「織屋」。池田さんはカギを自分であけると、勝手に中へ。パチリと裸電球をつけた。薄暗い室内。昔の木賃宿、2階に2間。約20畳に多い時で40人ほど雑魚寝状態で、旅の客が泊まったという。
鉄鉢に投げ入れられたわずかな銭や米の布施で、泊めてもらうわけである。けっして清潔とはいえない宿での雑魚寝だからノミ、シラミにもたかられたであろう。(つづく)
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